お話のカゴ

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正夢?

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今週のお題「〇〇からの卒業」ということで、卒業式のお話を考えました。

 

ざわざわざわざわ。

卒業生やその保護者達が校門を出てきます。

校門で記念写真を撮ったり、友達同士で別れを惜しんだり。

そんな中、このような会話が、あちこちでされてました。

「なんか、いい卒業式だったね」「面白かったね」「心に残る卒業式だったね」

「こういうのもいいんじゃない」

 

 

ここに無気力な高校生の青年がおりました。

何をやっても、長続きしません。高校も惰性で入れたような感じです。

入学式を終えた夜のこと。

「あれ?ここって、○○高校かな」

「僕って、昨日入学したばかりだよな」

「でも、光陰矢の如しっていうし、もう卒業なのかな」

青年は、あきらめというか、身を任せるというか、流れには逆らわないでおりました。

でも、見る光景は、予想と違いました。

高校3年間で立派に成長したと思われる青年は卒業生代表として、卒業証書を受け取っています。とってもとっても輝いていました。明るい未来が待ち受けていて、前途洋々、周りからもとても期待されています。

と、ここで夢が覚めました。

青年は、この夢は正夢との確証がありました。

理由はありません。ただ、今までの夢とも違い、あまりにもリアルでした。

青年も正夢と感じたのです、これは正夢を見た人にしかわからない感情でしょう。

 

それからの青年は、一変しました。

何事にも熱心に取り掛かり、勉学にスポーツに充実した高校生活を送りました。

両親も、あまりの変わりようにびっくりです。

そうして、あっという間に3年間が過ぎ、卒業式を迎えました。

青年は学年上位の成績、スポーツでも大活躍を見せましたが、でも卒業生代表とはなりませんでした。

しかし、良い習慣は良い結果をもたらします。

青年のその後の人生も充実した人生を送りました。

そうしているうちに、青年だった男にも家族ができて息子が出来ました。

息子が高校の卒業式を迎えるとき、青年だった男は「ここだったか」と考えました。

そう正夢のシーンです。

でも、違いました。息子も卒業生代表ではありませんでした。

そうこうしているうちに青年だった男も年を取ります。

教員職についていた男は母校の校長先生になりました。

校長になって、初めての卒業式です。

形式にうるさい教頭先生に「やれやれ」と思いながらも、そつなく校長の役割を務めるつもりでおりました。

卒業式が始まります。

卒業証書授与が始まりました。

卒業生代表が校長である男の前に近づいてきます。

「あーっ!これだったのか!!!」

校長先生、いきなり叫びました。周りはどよめきます。

そう。青年が見ていた正夢のシーンは、今回の卒業式だったのです。

今年の卒業生代表は、明るい未来が待ち受けていて、前途洋々、周りからもとても期待されて、輝きに満ちておりました。

 

「しっ、しつれいしました。」

校長先生が、そうつぶやくと、どっと笑いが起きました。

校長先生は、心が震え感動で涙しています。

こんどは周りも感化され、感動の嵐です。

そうして大変盛り上がった卒業式も、校長先生があいさつする番になりました。

とても熱いまなざしで、校長先生は語り始めます。

「卒業生の皆さん!夢は必ず叶います!私も叶いました!今、私は感動で身が震えております。だから、皆さんも夢を見ましたら、それを諦めず、いつまでも追い続けてください!」

校長せんせ~い、ポイントずれてますよ(苦笑)

 

おわり