お話のカゴ

ショートショート、お話を書いていきます

さっちゃんのおつかい

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今週のお題「買いそろえたもの」です。

こちらのお話を考えました。

 

ママは、さっちゃんにおつかいを頼むために買い物リストのメモを書いていました。

「これで全部かな~」そう言って、メモから目を離したときです。

「あれ?」メモが手元から無くなっていました。

「どこかに落としたかな?」ママは探しましたが見つかりませんでした。

「ははーん」ママは、何かに気づいたようです。

また、もう一度、同じ買い物リストのメモを書き始めました。

 

さっちゃんにママが言いました。

「さっちゃん、おつかいに行ってくれるかな」

「おつかい?いいよ~!」

最近、おつかいデビューした、さっちゃんは嬉しくてたまりません。

ママから、買い物リストのメモを受け取り、意気揚々と出かけました。

 

さっちゃんのおつかいは順調に進みました。

買い物リストの内容から「今日はカレーかな」とか言いながら、スーパーで買いそろえていきます。

「あ!ない!」

さっちゃんは、ママから受け取った買い物リストのメモが無くなったことに気が付きました。

「あれ!ない!ない!ない!」

ポケットやお買い物エコバック、お財布を探しましたが見つかりません。

もちろん、スーパーの歩いたところも一通り探しましたが見つかりませんでした。

でも、さっちゃん、やけに落ち着いてます。

「しかたがない。あれやるか」そうつぶやくと、トイレの個室に入り、集中しました。

しばらくたつと、あら不思議。買い物リストのメモが、さっちゃんの手にありました。

そうなのです。さっちゃんは超能力が使えるのです。

時間と場所を念ずると、その時間と場所から、手で持てるものであれば、現在に持ってくることが出来るのでした。

将来、このさっちゃんは、この能力を使って、テロリストの秘密文書を盗み出し、世界を人類滅亡の危機から救います。そのことについては、機会があれば、また。

今回は、おつかいです。

さっちゃんはママが買い物リストのメモを書いていた時間を狙って、メモを取ってきたのでした。

ただし、この能力には注意すべき点があります。

現在に持ってきたものは、元々あった時間と場所からは消滅してしまいます。

物は一つしか存在しないから、当たり前ですね。

でも、そのことを、さっちゃんは、まだ、あまり理解できていませんでした。

今回も、さっちゃんは、そんな注意すべき点にも注意を払わず、おつかいを続けていきました。

「よし、これで全部だ」そう言って、スーパーで会計を済まし、無事に帰宅しました。

 

帰宅するとママが「ありがとう!」と言って、優しく出迎えました。

「今日は、さっちゃんの好きなカレーよ」そう言って、お買い物エコバックを受け取りました。

そして「はい。これはご褒美」と言って、さっちゃんの大好きなチョコレートケーキを出してくれました。

さっちゃんは、「チョコレートケーキ、隠してあったのかな?」と少し不思議に思いながら、おいしくケーキを食べました。

 

これには、裏があります。

実は、ママがさっちゃんに渡した買い物リストのメモにはちゃんとご褒美のチョコレートケーキも書いてありました。

でも、さっちゃんが超能力で取り寄せた買い物リストのメモは、ママがチョコレートケーキを書く前の買い物リストのメモだったので、リストにチョコレートケーキが含まれていませんでした。

では、なんで、さっちゃんは、ご褒美にチョコレートケーキを食べることが出来たのか?

 

それは、ママも超能力者であり、千里眼が使えるのです。

ママはさっちゃんが超能力を使えることを知っており、どういった能力であるかも理解しつつありました。

さっちゃんの超能力は遺伝だったんですね。

だから、ママはメモが無くなった時も、さっちゃんがメモを取り寄せたことに気がつきました。その取り寄せた買い物リストのメモは、チョコレートケーキを書く前だったのです。

そして、千里眼で、さっちゃんのおつかいの様子も見ていたのです。

もちろん、買い物リストのメモを取り寄せていることも見ていました。

そこで、ママは、さっちゃんがおつかい中に、こっそりケーキ屋さんからチョコレートケーキを買ってきたのでした。

 

そんなことも知らず、さっちゃんは、大好きなチョコレートケーキを食べて幸せな顔をしていました。

ママは、さっちゃんがどれぐらいの年齢になったときに超能力のことや、注意すべき点を説明してあげようか思案しながら、幸せな顔をしている、さっちゃんを優しく眺めていました。

 

おわり