お話のカゴ

ショートショート、お話を書いていきます

天気予報の進歩

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最近の天気予報は1時間単位で予報されていて、すごいですね。毎日、重宝してます。

そんな天気予報にまつわるお話を考えてみました。

 

話題は、Aが勤めている会社のことになっていた。

「Aのとこの会社、依頼を受けた場所と日時について、天気予報を提供するサービスなんだってね。予報が当たる確率ほとんど100%らしいじゃん」

「まあ、そうかな」

「やっぱり、スーパーコンピュータとか使って、膨大なデータから予測したりしてるの?」

「うーん、ちょっと違うかな」

「なんだよ~、企業秘密ってところか」

「まあ、そんなところだ(笑)」

 

次の日、Aはトレイにイチゴ大福とお茶を持って、会社の中にある特別室に向かっていた。

特別室に入ると、そこには部屋の中央に古い祠が祭られていた。

Aは祠の前にトレイを置いて、ささやいた。

「おかみのかみ様、本日もどうか、お姿をお見せください。」

しばらくすると、Aの前に、おかみのかみ様が現れた。

「ほ~、今日はイチゴ大福か♪」そう言って、すでに1つ目を食べていた。

「うまっ」「ここの会社のお供え物、わし好き~」

おかみのかみが、イチゴ大福を堪能したころ、Aが言った。

「おかみのかみ様、そろそろ、お告げのほうをお願いできますでしょうか。」

「はいはい。今日は、どこかな」

「N町の二ヵ月後のお祭りの日の天気を教えていただけますでしょうか」

「あー、あそこね。ちょっと待って」

そう言って、おかみのかみは、手帳のようなものを取り出し、指折り数え、何かをつぶやいていた。

「よし。N町の町長は、なかなか、いいやつだし、お祭りの日は、晴れにしておこう」

「はは~。本日もありがとうございます!」

 

天気予報、当たるはずである。

天気を司る龍神の、おかみのかみ様に直接聞けるのだから。

 

おわり

 

他のお話に☆を付けていただいたり、読者登録いただきました。

ありがとうございます。励みになります。

 

鬼の父親からの手紙

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今週のお題「鬼」ということで、このようなお話しを考えました。

 

今年の夏は暑い。平日仕事で忙しかった俺は暇な土曜日をまったり家で過ごしていた。

ふと、先日、父親から手紙が届いていたことに気がつき、何気なく読み始めた。

 

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おにちゃん、元気ですか。

こちらは、お父さん、お母さん、つのちゃん、みんな元気です。

ちゃんと、ごはん食べてますか。

おにちゃんは、おなかが空くとすぐに不機嫌になるから、ちゃんと食べるんだよ~

 

今回、このように手紙を送ったのは、あることを鬼吉に伝えるためです。

鬼吉も社会人となり、立派に独り立ちしてくれました。頼もしく感じます。

将来、結婚することもあるでしょう。これから話すことは、そのときの相手選びの助けにもなるかもしれません。

 

実は、我々家族は、鬼の一族です。

鬼のお父さん、お母さんから生まれた、あなたも、もちろん鬼です。

混乱しているかな。それとも、うすうす感じていたかな。

 

まず、ご先祖様のお話をしましょう。

昔話に「桃太郎」って、あるでしょ。あれ実話です。

桃太郎に退治された、鬼一族は、地獄で生きていくことを選んだ鬼たちと人間と共存することを選んだ鬼たちに別れました。

その人間と共存することを選んだ鬼たちが、私たちのご先祖様です。

角も、すっかり退化して、少しの出っ張りになったし、肌の色も剛毛も、人間と同じ食べ物を代々食べていくことによって、だいぶ目立たなくなりました。

それでも、ほんのときどき、鬼の一面は出てしまいます。

鬼吉が空腹になると、暴れだすのも、鬼の性質ですね。気をつけなさいね。

 

お父さんも、自分の父親から、このことを聞いたとき、それまで疑問に思っていたことに納得がいきました。

幼稚園で聞かされた昔話の桃太郎、一寸法師は大嫌いだったし、

節分の豆まきでは、異常に血が騒ぎ、家では「鬼も内、福も内」が掛け声だったし。

子供のとき、みんな仮面ライダーや戦隊ヒーローに夢中の中、お父さんのヒーローは、雷神、風神だったし。お父さんの名前、鬼次郎だし。

 

鬼吉も桃太郎、一寸法師は嫌いでしたね。お母さんと笑いあったものです。

でも、鬼吉のときは、鬼の仮面ライダーが登場したから、よかったよね~

また、最近はハロウィンで、思いっきり、鬼の格好もできるから、うれしいよね。いい時代になったものだ。

 

そうそう、ひとつ大事なことを。我々、鬼一族は、鬼同士で結婚しています。

別に掟や罰則もなーにも縛りはありません。でも、自然と選ぶ相手は鬼同士になります。昔からそうなんだって。お父さん、お母さんも、もちろんそうです。数は少ないけど鬼一族は他にも居ます。

世の中に、たまにいるでしょ、「仕事の鬼」、「鬼のような人だ」、「鬼の形相をみせる」、あれ、たぶん本物の鬼も入ってます。

だから、鬼吉も安心してください。運命の鬼に出会うことが必ずあります。出会った瞬間、惹かれあうことでしょう。

 

ということで。鬼吉、これからも仕事、頑張りなさい。

 

追伸

お父さんが監督する高校野球チームが甲子園に出場決まりました。応援よろしく!

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父親からの手紙を読み終えた俺は、頭が混乱していた。

が、すぐに父親がいうように、納得もしていた。

すぐさま、テレビをつける。

父親が監督するチームが初出場で1回戦勝利ということをアナウンサーが興奮気味に伝えていた。

「初出場で優勝候補チームに勝利しました○○高校の鬼山監督です。監督は、ふだん生徒たちから"鬼監督"と呼ばれ、練習も相当厳しいと伺ってます。今回、それが実りましたね!」

「はい。みんな、鬼の練習によく耐えてくれました。生徒たちを誇りに思います。」

テレビに映った父親の満面の笑みには、ほんの少しだけ鋭い牙が見えていた。

 

おわり