お話のカゴ

ショートショート、お話を書いていきます

ピーターの願い

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お題「#この1年の変化」ということです。やはり新型コロナウィルスのことは、外せないですよね。私も生活が一変しました。テレワークが増え、お出かけが減り、マスクが手放せない状況です。ワクチンの計画も進んでいることから、この状況は好転すると信じています。今回は、新型コロナウィルスについて、このようなお話を考えました。

 

ピーターは、今夜もこっそりと家を抜け出し、公園へ向かった。

夜の公園は危険であることはわかっている。でも、新型コロナウィルスの影響で、夜の公園は、ひっそりと静まり返っていた。考え事をするにはぴったりなのだ。

最近、ピーターは悩んでいた。育ての親の、おじいさんとおばあさんが経営しているカフェが、新型コロナウィルスの影響で、お客が激減し、危機的状況に追い込まれていた。いつも明るかった、おじいさん、おばあさんも最近元気がない。

ピーターは、自分に出来ることが何かないか。おじいさん、おばあさんに何か恩返しはできないか。世の中の新型コロナウィルスで苦しんでいる人達を救いたい。そのようなことを考え、今の自分には知識も力も無いことを悩んでいた。

そんなことを悩みながら、持ってきた、おやつを食べていると、向こうの方から、同じぐらいの年齢の子がやってきた。

「やあ、こんばんは」

ピーターは少し警戒したが、相手は別に悪そうではなかったので、挨拶を返した。

ピーターは善悪について、鼻が利くのだ。

「こんばんは」

相手はピーターが食べているおやつを見ながら、言った。

「おいしそうだね。少し分けてくれないかい」

「いいよ、半分あげる」

ピーターは思った。おなかが空いているのだろう。

この子のところも、新型コロナウィルスで苦しんでいるのかもしれない。

「なかなか、おいしかった。ありがとう」

「どういたしまして」

「さっき、君はすごく悩んでいたね。どうしたんだい」

ピーターは、どうしたもこうしたも、新型コロナウィルスのことに決まっているだろって、言いたいところを抑えつつ、最近悩んでいることを話してみた。

「そうなのか、この星は新型コロナウィルスが発生しているのか」

ピーターは、へんな奴と思いつつも、じっと聞いていた。

「私は、実はこの星の人間が言うところの宇宙人なんだ。先ほどのおやつのお礼に君の悩みを解決してあげるよ」

ピーターは思った。こいつ妄想癖があるのかな。まあいいや、こんな夜の公園で出会ったのも何かの縁。付き合ってやろう。

「ありがとう。よろしくたのむよ」

「では、この薬をあげるよ。一粒食べてみるといいよ。私の星で使用されている新型コロナウィルス対策だよ。」

さすがに躊躇った。見た目は飴のようである。何も害はなさそうには見える。でも、こいつは噓をついているようには感じられないし、先ほどから悪い奴が出すニオイも全くしない。ピーターは、この自称宇宙人のことを信じて、もらった薬を口に入れた。

「おいしい、おやつをありがとう。それでは、さようなら」

宇宙人は、UFOに乗って飛び去って行った。

 

2週間後、ピーターは、とても幸せな気持ちになっていた。

おじいさんとおばあさんのカフェにお客さんが戻ってきて、危機的状況から抜け出したのだ。二人の表情もとても明るい。

 

ニュースでは新型コロナウィルスの感染者数が急激に減少していることを伝えていた。

「ここ最近、新型コロナウィルスの感染者数が減少している原因について、専門家に伺いました。」

専門家「新型コロナウィルスを弱体化する乳酸菌の一種が人々に感染というかたちで広まっていったことが原因です。その乳酸菌は突然変異で生まれたということがわかってきました。ただし、突然変異した、その乳酸菌は本来、犬しか持っておりません。この乳酸菌は、新型コロナウィルスを弱体化し、さらに犬から人間に感染するという変化を遂げました。人類にとって、なんて幸運な奇跡が起こったことでしょう。」

 

ピーターは、宇宙人にお礼のつもりで、夜の空に向かって叫んだ。

「ワォーン」

 

おわり

  

 

 

天気予報の進歩

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最近の天気予報は1時間単位で予報されていて、すごいですね。毎日、重宝してます。

そんな天気予報にまつわるお話を考えてみました。

 

話題は、Aが勤めている会社のことになっていた。

「Aのとこの会社、依頼を受けた場所と日時について、天気予報を提供するサービスなんだってね。予報が当たる確率ほとんど100%らしいじゃん」

「まあ、そうかな」

「やっぱり、スーパーコンピュータとか使って、膨大なデータから予測したりしてるの?」

「うーん、ちょっと違うかな」

「なんだよ~、企業秘密ってところか」

「まあ、そんなところだ(笑)」

 

次の日、Aはトレイにイチゴ大福とお茶を持って、会社の中にある特別室に向かっていた。

特別室に入ると、そこには部屋の中央に古い祠が祭られていた。

Aは祠の前にトレイを置いて、ささやいた。

「おかみのかみ様、本日もどうか、お姿をお見せください。」

しばらくすると、Aの前に、おかみのかみ様が現れた。

「ほ~、今日はイチゴ大福か♪」そう言って、すでに1つ目を食べていた。

「うまっ」「ここの会社のお供え物、わし好き~」

おかみのかみが、イチゴ大福を堪能したころ、Aが言った。

「おかみのかみ様、そろそろ、お告げのほうをお願いできますでしょうか。」

「はいはい。今日は、どこかな」

「N町の二ヵ月後のお祭りの日の天気を教えていただけますでしょうか」

「あー、あそこね。ちょっと待って」

そう言って、おかみのかみは、手帳のようなものを取り出し、指折り数え、何かをつぶやいていた。

「よし。N町の町長は、なかなか、いいやつだし、お祭りの日は、晴れにしておこう」

「はは~。本日もありがとうございます!」

 

天気予報、当たるはずである。

天気を司る龍神の、おかみのかみ様に直接聞けるのだから。

 

おわり

 

他のお話に☆を付けていただいたり、読者登録いただきました。

ありがとうございます。励みになります。

 

鬼の父親からの手紙

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今週のお題「鬼」ということで、このようなお話しを考えました。

 

今年の夏は暑い。平日仕事で忙しかった俺は暇な土曜日をまったり家で過ごしていた。

ふと、先日、父親から手紙が届いていたことに気がつき、何気なく読み始めた。

 

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おにちゃん、元気ですか。

こちらは、お父さん、お母さん、つのちゃん、みんな元気です。

ちゃんと、ごはん食べてますか。

おにちゃんは、おなかが空くとすぐに不機嫌になるから、ちゃんと食べるんだよ~

 

今回、このように手紙を送ったのは、あることを鬼吉に伝えるためです。

鬼吉も社会人となり、立派に独り立ちしてくれました。頼もしく感じます。

将来、結婚することもあるでしょう。これから話すことは、そのときの相手選びの助けにもなるかもしれません。

 

実は、我々家族は、鬼の一族です。

鬼のお父さん、お母さんから生まれた、あなたも、もちろん鬼です。

混乱しているかな。それとも、うすうす感じていたかな。

 

まず、ご先祖様のお話をしましょう。

昔話に「桃太郎」って、あるでしょ。あれ実話です。

桃太郎に退治された、鬼一族は、地獄で生きていくことを選んだ鬼たちと人間と共存することを選んだ鬼たちに別れました。

その人間と共存することを選んだ鬼たちが、私たちのご先祖様です。

角も、すっかり退化して、少しの出っ張りになったし、肌の色も剛毛も、人間と同じ食べ物を代々食べていくことによって、だいぶ目立たなくなりました。

それでも、ほんのときどき、鬼の一面は出てしまいます。

鬼吉が空腹になると、暴れだすのも、鬼の性質ですね。気をつけなさいね。

 

お父さんも、自分の父親から、このことを聞いたとき、それまで疑問に思っていたことに納得がいきました。

幼稚園で聞かされた昔話の桃太郎、一寸法師は大嫌いだったし、

節分の豆まきでは、異常に血が騒ぎ、家では「鬼も内、福も内」が掛け声だったし。

子供のとき、みんな仮面ライダーや戦隊ヒーローに夢中の中、お父さんのヒーローは、雷神、風神だったし。お父さんの名前、鬼次郎だし。

 

鬼吉も桃太郎、一寸法師は嫌いでしたね。お母さんと笑いあったものです。

でも、鬼吉のときは、鬼の仮面ライダーが登場したから、よかったよね~

また、最近はハロウィンで、思いっきり、鬼の格好もできるから、うれしいよね。いい時代になったものだ。

 

そうそう、ひとつ大事なことを。我々、鬼一族は、鬼同士で結婚しています。

別に掟や罰則もなーにも縛りはありません。でも、自然と選ぶ相手は鬼同士になります。昔からそうなんだって。お父さん、お母さんも、もちろんそうです。数は少ないけど鬼一族は他にも居ます。

世の中に、たまにいるでしょ、「仕事の鬼」、「鬼のような人だ」、「鬼の形相をみせる」、あれ、たぶん本物の鬼も入ってます。

だから、鬼吉も安心してください。運命の鬼に出会うことが必ずあります。出会った瞬間、惹かれあうことでしょう。

 

ということで。鬼吉、これからも仕事、頑張りなさい。

 

追伸

お父さんが監督する高校野球チームが甲子園に出場決まりました。応援よろしく!

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父親からの手紙を読み終えた俺は、頭が混乱していた。

が、すぐに父親がいうように、納得もしていた。

すぐさま、テレビをつける。

父親が監督するチームが初出場で1回戦勝利ということをアナウンサーが興奮気味に伝えていた。

「初出場で優勝候補チームに勝利しました○○高校の鬼山監督です。監督は、ふだん生徒たちから"鬼監督"と呼ばれ、練習も相当厳しいと伺ってます。今回、それが実りましたね!」

「はい。みんな、鬼の練習によく耐えてくれました。生徒たちを誇りに思います。」

テレビに映った父親の満面の笑みには、ほんの少しだけ鋭い牙が見えていた。

 

おわり